雲林院記事(公開前)

■前シテ部分について


-素人の感想ですが、前シテの部分が能にしては事細かに書かれている印象がありました


ワキは芦屋の名士ですが、『伊勢物語』に傾倒している、謂わば文学青年です。
最初は咎めに現れるシテですが、古歌を引いての問答の末、心を通い合わせると云いましょうか、都の美しい景色を共に楽しみ語り合います。
歌と文学を通して男同士が理解し合う様子が描かれるので、そういう印象になるのかもしれませんね。

-出方が独特なんですね


ちょっと意地悪な感じですよね。知らぬ素振りで登場します。
風も無いのに枝が折られた。鶯か、松風か、まさか人か。
や、ここに人がいた。嵐でさえ花を散らすだけなのに、枝ごと折るとは嵐より情けのない人だと。


とは言いましても、本当に意地悪でも頑固な老人でもありません。このワキだからこそ現れたのですし、ワキの霊夢にしても、ここへ呼ぶためにシテが起こしたのやも知れません。
やはり二人の関係が伊勢物語を通しての、作者と熱烈な読者といった何か通じている様な感じが伝わらなければと思います。



■「雲林院」は鬼の能!?


-「雲林院」の原型があったということですが


古作に既に鬼の能として存在していたようですが、世阿弥自筆本も、前半は変わりありませんが、後半は鬼が女を食い殺してしまうという内容で、業平は登場しません。
高子の兄達が追って来て、妹を荒々しく取り返す芥川の段そのものという事ですね。
その後金春禅竹が「小塩」を書きます。こちらは現行の「雲林院」と同じく優雅、風雅の曲です。
現行の「雲林院」も禅竹が改訂して出来た説もあるようですが、やはり世阿弥が上等な能にするために今の「雲林院」の形に書き変え、それから禅竹が類作を書いたと見るのが良いようです。
ただ実際の業平の激情や行動を考えますと、ただ清らかで上品な貴公子の舞だけでは面白くないですね。

-では、激しさも内に秘めた舞をと意識されて臨まれるのですか?


そうですね。
ただただ眉目秀麗の優男の品のある舞だけでは駄目だと思っています。
業平の屈折した、相当にゆがんだ愛情の表現といったような事が底辺に無くてはと思うんですね。
ただの色好みの話で終わったら面白くないのではないかと。


-舞の型だけでそれを表すのは非常に難しくないでしょうか


そうですね。

型というのは謂わばパターン化されたものですから、それだけでは意味をなさないものです。しかしそこに謡の詞章が加わり、最も重要な役者の技術と解釈が加わって表現力が生まれます。


そういう意味では型通りに舞っていては駄目という事なんですね。もちろん好き勝手に動くという事ではありませんよ。型の意味を考え、心が整って初めてその動きにならなければなりません。業平の激情が潜んでいる舞を考えています。

-その在原業平といえば、随分なプレイボーイですね


『伊勢物語』はエロティックですからね。
能のクセも濃艶です。
二条の后を奪って逃げるという大胆な行動をする人物ですが、やはり歌が素晴らしい。「愛が無ければ生きていけない」という所はありますが、純粋です。
後世とは道徳観念が全く異なる時代とはいえ、あまりに奔放ですけどね。


-業平の人としての魅力が感じられますね


『伊勢物語』を日本人がいかに愛してきたかが分かりますし、業平の朦朧体の歌の偉大さを感じます。能の中に業平の歌がどれだけ詠み込まれている事か。「杜若」、「井筒」は勿論ですが「隅田川」の都鳥もそうですね。歌から一曲の発想を得るなんて事も能作者はするのです。
「小塩」も舞いましたが、やはり業平の恋をストレートに表している「雲林院」=(イコール)業平ですね。


■みどころ


-お話として十分に魅力的な「雲林院」ですが、あえて見どころと言いますとどんなところでしょうか


やはりクセはとても素晴らしい詞章ですね。
『伊勢物語』の芥川のくだり、非常に濃厚な文章を謡っていますが、その濃艶な部分を優雅な上品な舞で隠しているわけですね。
だからと言ってエロティックな部分が出ないと逆に面白くないとも言えます。


そこから序ノ舞、キリへとつながっていくという、やはり貴公子の舞なんですよ。
王朝の優雅さが当然出なくてはいけない。
しかしその底辺にあるのは業平のとてつもない激情です。そこには『伊勢物語』の秘事を暴くという快感があるんですね。
舞台の上で、能役者が暴きたいんですよ(笑)。


-舞で注力されている点とはどんなところでしょうか


男で序ノ舞を舞うのは業平だけでしょう。遊行柳、西行桜は草木の精ですから別物ですね。
これは鬘物と同じだと思いますよ。一瞬たりとも形が崩れないようにしないといけません。気が抜けませんね。


世阿弥の「せぬ隙(ひま)」という言葉があります。
要するに、何もしていない、何も謡ってない、何も動いていない状態の時にどれだけ充実していられるか、ということですね。動いている時より更に力を内に張り詰めて、存在しているのです。
勿論それを感じさせずにですけどね。
能は全てそうですが、静かな曲では特にこれが大事になります。

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