「石橋」公開前原稿

・此度は「石橋」を披かれますこと、誠におめでとうございます
    まずは一言お願いできますでしょうか

有難う御座います。決して道のりは易しいものではなかったと染み染み思いますが、多くの方に支えて頂きながら本曲に辿り着きました
光栄至極、万感の思いです


・今回の披きは、ご自身にとってどのような節目と感じておられますか

能楽師としては道半ばですが、「石橋」がある意味での一つの山の頂きだと思います
今まで地謡として何度も本曲に携わって来たからこそ、いざ舞う側として務める際の心積もりは激烈という言葉に尽きます


・今「石橋」を披かれること、満を持してとお見受けしますが、ご自身のご感想はいかがでしょうか

三十六歳になり、若干の体力の衰えは感じます…が、情熱だけは少しも昔と変わりません

・ご自身が感じられる「石橋」の難しさはどのような点でしょうか

本曲において言葉は不要です より強く、高く、早く、堅く、勿論のこと型を乱さず美しく…ということに尽きます


・初同からクリ、クセと繰り返し語られる橋の狭さ・谷の深さ・苔の滑らかさは、どのような効果をもたらしていると思われますか

石橋の向こうとは、謂わば涅槃であり、六道輪廻からの解脱、つまりまず死ぬことを意味しておりますから、しっかり人生を見つめ直して修行を積み直しなさい、易い道ではないですよ…と言ってる訳ですね  それが能楽師としての道程とも重なっているわけですが、後半、シテ:獅子が思う存分に橋の上で勇壮に舞い、修行の成果を発揮しなければならないという芸事上での戒めになっていると思います


・その中でも謡の聴き所はどこだとお考えですか

クセ「虹をかける姿」あたりは特徴的な謡で石橋の特別感を演出します そして後の「獅子団乱旋の〜」からは血反吐を吐くごとく、と言い伝わる、悲壮なまでに激烈な箇所です 謡宝生の思想性を強く反映していると言えるでしょう
・獅子の舞いについてお伺いします 体幹・足運び・呼吸など、身体的に特に意識している点はありますか

すべて積み重ねて来たものです 研究はしますが、意識は不要です


・囃子方との緊張感あふれるやりとりで、気を付けていることはございますか

ありません 場を呑むだけです

・「石橋」後のご自身の目指す能楽師像がありましたらお聞かせください

時に怒涛、時に月夜のように、変幻自在に舞いたいですね
毎回「前に舞った時と別の人?」と思われる能楽師でありたいです


・最後に、後援されている皆様へ一言お願いいたします

去年から今年にかけ、私生活でも大きな変化が御座いました たゆむことなく精進したいと思います
来年4月には道成寺を披かせて頂きます
是非とも能楽堂でお見届けください

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